【H29年度第2種】日中韓の貿易構造変化と各国経済への影響-国際産業連関表による実証分析-

担当:

立正大学経済学部 教授 王在喆
中京大学 教授 山田光男
(株)日本アプライドリサーチ研究所 研究主幹 横橋正利

内容:

本研究は、日中韓3ヶ国間の貿易がそれぞれの国の経済に及ぼす影響を実証分析するものである。貿易の影響は最終財のみならず、中間財やサービスなどの貿易による影響もある。各国の幅広い産業の生産活動に対する貿易の影響を計量分析するために本研究では、貿易統計と産業連関表を接続した『2012年日中国際産業連関表』(以下、「日中表」と呼ぶ)を作成した。国際産業連関表の開発は古くは1949年を対象としたアメリカ-カナダ表が存在している。2000年以降は付加価値貿易の議論に関連して表の整備が盛んに行われ、代表的なものとしては欧州の世界産業連関表(WIOD)や日本の横浜国立大学のアジア国際産業連関表がある。しかし、2つの表はいずれも多くの国を対象とする一方で、極めて粗い分類のもとで作成されている。この流れとは異なり、日本では1980年代以降経済産業省によって2国間表が作成されている。最新の表に2005年日米表や2007年日中表がある。これらは2国に絞ることによって極めて詳細な表を作成し、生産性分析や価格比較を可能にしたものである。本研究グループはこの経済産業省の国際表作成に委員として携わり、更に2007年日中表を用いた研究成果も出版した。その後、経済産業省が国際表作成を中止したことに伴い、本研究グループの手によって「日中表」を作成することを計画したものが本研究プロジェクトである。表作成の際には中国国家信息中心、中国国家統計局、中国人民大学経済学院、韓国産業研究院(KEIT)などから協力を得ている。
「日中表」を作成するために日中両国の産業連関表を入手し、中国表について2012年表が既に作成されているため、それを基礎データとして利用することができ、日本については2011年基準の2012年延長表を利用した。その上で、両国の産業連関表については部門概念や表章形式などの相違、とりわけ日中の産業連関表における間接税の取り扱い、屑・副産物の取り扱い、加工貿易に関する取り扱い、自家輸送部門の取り扱い、金融部門の取り扱い、旅行業の取り扱いなどについて調整を行った。このようにして作成した「日中表」を用いて以下のような分析を行うことを予定している。1つは、日中間貿易を中心とした国際貿易が両国経済に及ぼした影響を計測することである。例えば、日本から中国への輸出によって日本国内の生産が増加する効果は貿易による日本経済へのプラス効果であると言える。一方で、中国からの輸入によって日本国内の生産が減少した場合、それは貿易による日本経済へのマイナスの効果であると考えられる。このような効果は、貿易財そのものの生産増減だけでなく、商業や運輸、その他のサービスなど、幅広い産業にわたって発生するものである。因みに「日中表」を作成した上で、それを日中韓の国際産業連関表への拡張も予定されている。