【H30年度第3種】焼成考古試料のルミネッセンス被熱温度推定法の体系化と高確度化

担当:

地球環境科学部 助教 下岡順直

内容:

焼成考古試料の被熱温度推定の体系化と高確度化をさらに進めていくために、光ルミネッセンス法を用いた被熱温度推定の適応例を増やした。具体的な試料としては、鳥取県青谷上寺地遺跡のガラス工房と想定される地点の焼土群、山形県日向洞窟の焼土および焼石、モンゴルの匈奴瓦やタイルなどについて、光ルミネッセンス法を用いた被熱温度推定を行った。さらに、これら試料では被熱温度推定とともに、データの再現性を検討するため、試料に対して再度人為的加熱処理を施した後に被熱温度推定を行い、推定温度が再現できるか検討も行った。
その結果、再加熱温度を推定することができ、データの再現性について確認をすることができた。これにより、これまで不透明であったデータの表現法や解釈についてある程度一般化することができるようになった。そして、これらの実験をもとに測定手順を整理してフローチャート化し、高精度データ取得の道筋を体系的に整えることができる見通しがたった。
適応例では、鳥取県青谷上寺地遺跡では約500〜600℃、日向洞窟では焼土試料では約500〜700℃、焼石試料では約600〜700℃、匈奴瓦では約700〜800℃、匈奴タイルでは約600〜700℃の被熱が推定できた。以上の成果については、すでに学会発表や報告書としてデータを公表した。
今後は、光ルミネッセンス法を用いた被熱温度推定データを検証するために、X線回折装置を導入して鉱物ごとの被熱温度推定を行うなどして相互比較を行っていく必要がある。鉱物ごとの被熱温度推定については、いくつかの文献を収集して解析をおこなっている。また、測定環境についてもいかに測定に供する試料を少なくできるか検討を行い、ドリルピットを購入するなど整備をすすめた。