【H30第2種】メガイベントが観光関連産業に及ぼす影響に関する実証分析   

担当:
経済学部 教授 宮川幸三
UNWTO(世界観光機関)Advisor for Tourism, Sports and Mega Events 亀山秀一

内容:
 本研究の目的は、オリンピックやワールドカップ等のいわゆるメガイベントが観光にもたらす影響の大きさについて、統計データを用いて分析することである。一言でメガイベントの影響といってもその内容は多岐に渡るが、本研究では特にインバウンド観光客数に対する影響に焦点を絞り、メガイベント実施時点の効果だけでなく、実施前後の効果や、イベント開催都市の種類および気候の違いによる影響なども分析した。本稿で扱ったメガイベントは、夏季・冬季オリンピック、サッカーワールドカップ、ラグビーワールドカップ、国際博覧会、の5つである。使用するデータは、1995年から2016年にかけての53ヶ国のパネルデータであり、特に観光関連のデータについては連携研究先であるUNWTOより提供を受けている。
分析にはグラビティモデルを応用し、メガイベント実施ダミー変数のパラメータを推定することによって、メガイベントがインバウンド観光客数に及ぼした影響の大きさを求めている。モデルの説明変数としては、メガイベント変数に加え、各国のGDP、人口、貿易額、相対価格、観光向け政府支出、観光関連投資、2国間の地理的距離といった量的変数、および言語、国境、通貨、植民地関係などの質的な変数も用いている。このような多国間の多様かつ膨大なデータセットを整備したこと自体も、本研究の成果の1つである。
分析の結果、イベント実施前にはインバウンド観光客を増加させる効果が発生しているものの、イベント実施後はゼロもしくはマイナスの影響を持つ傾向にあること、夏季オリンピックについては比較的大きなプラスの効果が検出された一方、寒い地域でイベントを行った場合には、むしろマイナスの効果が検出されることなどが明らかとなった。また、2020年東京オリンピック開催によるインバウンド観光客の増加人数および旅行支出額増加分を試算し、それぞれ合計で24.3百万人・3.8兆円の効果があることを示した。これらの結果は、今後様々なメガイベント開催を控える日本にとって、イベントの効果を再確認し、イベントのレガシーを有効活用するための方策を考えるうえでも重要である。
これらの研究成果については、UNWTOとの覚書に従い、現在までに既に成果報告書の1st draftを提出したところである。今後は、6月末までにfinal draftを提出したうえで7月末を目途に論文を執筆し、学内紀要あるいは学術誌等に投稿する予定である。