【R1第3種】クライシス・コミュニケーションのメッセージ選択が消費者の信頼回復に与える効果

担当:畠山仁友 経営学部 准教授

内容:

本研究の一環として、クライシス・コミュニケーションにおいて、情報の先行性と情報量が、消費者が危機を知覚するフレームや、信頼や評判、クチコミにどのような影響を与えるのかを、定量的な調査と統計的な分析によって検証した研究を行った。既存研究と異なる点は、情報公開の先行性だけではなく、その際に発信される「情報量の違い」にも注目している点である。情報公開のスピードと情報量には、トレードオフの関係が想定できるためである。つまり、情報をスピード感を持って公開していくためには、情報量を犠牲にする必要が現実にはあると考えられる。
情報公開のスピードと情報量に着目した理由は、企業は不祥事が起きたときに、正確な情報をできるだけ詳細に語ることが必要なのかということに疑問を持ったためである。情報量が少なくても、こまめに情報を積極的に公開していくことが有効な可能性もある。危機状況下にある企業が、情報量を犠牲にしてスピードを優先させることが定量的な証拠に基づいて検証されれば、実務的に有用なインプリケーションとなる。
 調査分析の結果、実験1では、少ない情報であっても、第三者より先行して企業自らが危機についての情報を発信する「スティーリング・サンダー」が、有効であることが確認された。具体的には、消費者が知覚する危機の深刻度を下げ、情報に注意を払う注目度も下げるという危機を知覚するフレームへの効果が見られた。実験2では、第三者に先行されてしまい企業が後手にまわった場合を想定して、情報量の多少が消費者の企業に対する信頼や評判、クチコミ意向にどのような影響を与えるのかを検証した。その結果、ポジティブなクチコミのみに情報量の多少によって差があることが確認された。しかし、絶対値が低いことと、信頼性、評判、ネガティブなクチコミという3変数には差が無かったため、情報公開が後手にまわってしまった場合、情報量の多少についての効果はほとんど無いと言える。