第二幕:文学演劇にみる直実さん


















 直実の登場する文芸著書は数多くあるが、まず「東鑑」「源平盛
衰記」「平家物語」「平治物語」があり、謡曲「敦盛」、人形浄瑠
璃「一谷嫩軍記」が挙げられる。
 その他、歌曲、詩、短歌、狂歌、俳句、川柳にも直実は登場して
おり、時世時節が変わろうとも今尚私たちの心の中に生き続けてい
る、熊谷の偉大なる人物である。
 それ故に、平成8年には熊谷市民の有志で「熊谷歌舞伎の会」が誕
生し、翌々年の秋、小鹿野歌舞伎保存会の協力を得て、熊谷寺本堂
にて『熊谷陣屋』で旗揚げ公演を行った。この時は、2日続きの大雨
であったが、本堂に立錐の余地の無いほどの人気を博した。
 そして今年(平成19年)が直実公800年忌に当たることから、熊谷
寺本堂にて「熊谷陣屋」を再演する運びとなった。
 なお、小鹿野歌舞伎保存会も2段目の「陣門・組討」を上演し、
"直実・蓮生まつり"の盛り上げに協力することになっている。

歌舞伎 「一谷嫩軍記」は、並木宗輔原作の浄瑠璃で

・ 大序  堀川御所の段     敦盛出陣の段  
" 二段目 陣門の段  須磨浦の段  組討の段 林住家の段
" 三段目 弥陀六内の段  脇ケ浜宝引の段  熊谷桜の段
     熊谷陣屋の段
" 四段目 六弥太館の段
に分かれているが、歌舞伎では、特に三段目の「熊谷陣屋の場」が
有名で、大歌舞伎でも地芝居でも好んで上演されている。

『熊谷陣屋』(くまがいじんや)あらすじ

熊谷(くまがい)次郎(じろう)直実(なおざね)の妻・相模(さがみ)は
「女が戦場に来るものではない」と言われていたが、我が子小次郎
(こじろう)の初陣(ういじん:戦争に初めていくこと)が心配で、は
るばる生田(いくた)の森の陣屋(じんや:戦争の時の本拠地:現在
の兵庫県)まで来てしまいます。

幕が開くと、村人たちが熊谷次郎直実の陣屋庭先の桜に立てた制札
を見ています。村人が退場すると、舞台には夫の帰りを待ちわびる
相模が障子を開けて登場します。まもなく、花道(はなみち:舞台
の左側にある役者が出入りするところ)から熊谷次郎直実が重い足
取りで陣屋に帰ってきます。熊谷は庭先の桜に「一枝を剪(き)らば
一指を切るべし」と弁慶(べんけい)が書いた制札(せいさつ:命令
などを書いた立て札)を見てうなずき、中に入ると相模と家来の軍
次が出迎えます。熊谷は、相模の姿を見て(何故、遠い戦場までや
って来たのかと)腹を立てますが、平敦盛(たいらのあつもり)の首
を打って手柄(てがら)を立てたことなど、戦(いくさ)の様子を話し
て聞かせます。

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