【H29年度第3種】ネパール仏教の総合的研究                                 

担当:

仏教学部 特任講師 佐々木一憲

内容:

平成29年度の本支援費応募の際に仮題としていたのは、「社会通念の成立と更改についての形成史的研究―インドにおけるサンスクリティゼーション現象を題材として」であったが、その後の研究の進展に伴い、上記の「ネパール仏教の総合的研究」というテーマを主軸に据え、研究を進めた。科学研究費の応募に際しても、そのテーマに沿った案を考え、最終的に「「密教」の源流の探求とヒマラヤ宗教文化圏の構想」というタイトルのもと、ネパールおよびカシミールの仏教文化に焦点をあてる研究計画をつくり、申請を行った。昨年まで研究期間の続いていた科学研究費受託プロジェクトがあったため、昨年の申請は全く新規に構想されたものである。
 昨年、第三種に申請した際に考えていた研究テーマ「社会通念の成立と更改についての形成史的研究―インドにおけるサンスクリティゼーション現象を題材として」は、いわゆる「学問的定説」がどのように形成され、認知されるか、という点に着目し、それをサンスクリティゼーションという現象を題材に解き明かそうとしたものであった。その狙いは、定説となっている学問的パラダイムの転換という事態こそがあたらしい学問の成立につながるものだという見立てに基づき、パラダイムそのものの成立と転換ということを題材にし、インド学分野に題材をとって解明していこうとしたものであった。
 昨年、最終的に科研の応募課題としたプロジェクトは、表面上、第三種の申請時に考えていたものとは全く違う研究のように見えるが、新課題は実際には前課題の問題意識を引き継ぎながら、研究の素材をインドのサンスクリティゼーションからネパール独自の仏教である「ネワール仏教」の成立に移したものということができ、表面的な違いほどには、内容に実質的に違いはない。
定説の乗り越え/パラダイム転換という事態のメカニズムを解明するという着眼点は、仮に科研費研究の想定する研究のイメージにはそぐわないものであったとしても、学問研究としては大きな意義を持っていると報告者個人としては確信している。おそらく、その学問的意義を明確に示しうる直接的な研究素材を見つけ、その意義を申請書において上手に示すことができれば、科研費の採択にもつながると見込んでいる。従って、採択にむけて鍵となるのは、パラダイムの転換の事例をより具体的に絞り込むことであり、新旧パラダイムの対比を明瞭に打ち出すことができる素材を見つけることであると認識している。