【H29年度第5種】法教育と自治体との企画協働による学生主体の地域貢献 〜法的アクティブ・ラーニングの多様性を求めて〜

担当:

法学部 准教授 西谷 尚徳

内容:

1.概要
法学部では、授業(専門科目)の一環として法的アクティブラーニングを行っている。本事業では、学生が自治体や教育機関と連携し協
働する。学生が自ら企画・運営するとともに、自発的な活動を行う。専門学修への汎用性や発展性を意識しながら取り組むことで、専門
学修に結びつけたり、ゼミナールで共有したりと、活発な法的な学びが期待できる。
2017年8月、北海道女満別高校において、「法学&防犯セミナー」内で、法教育ワークショップを実施した。学生は、授業内外で企画・準
備のすべてを担当、行政や教育機関との連係にも積極的に関わり進行させた。
ワークショップでは、生徒の学びを充実させるため、憲法・民法・刑事法など5ブースを設定・分担し、身近な問題を法律や校則に絡めて
わかりやすく説明した。

2.背景と目的
北海道大空町は、「網走監獄博物館」や「網走刑務所」があり、法学部生
にとっては実地に赴き、刑事学(刑事法)や行政学、あるいは社会学と
いった研究を経験的に学修できる数少ない自治体の一つである。この活
動(企画申請)に伴い、北海道女満別高等学校から「法学&防犯セミ
ナー」の依頼があったことも関連する。2017年度から北海道大空町および
大空町教育委員会、さらには女満別高校との協働を完成させたことで、法
学生が北海道オホーツク地区において、実地研修としてのフィールドワー
クが可能になった。
法学部生は上記機関と連携し、実際に刑務所見学や博物館観覧といった
研修を積み、また法教育ワークショップを通して相互の教育的発展に向け
て取り組んだ。学生は法教育ワークショップを企画・運営し、その実践から
生徒に法的想像力を教授することに加え、授業内での学修を通して法的
思考力や効率的な問題解決能力を習得し、専門学修に結びつける。

3.方法と結果
ワークショップでは、学生が高校生に向けて5つのブースで学習を運営する。
①憲法Ⅰ「SNSに潜む影」:
憲法(プライバシー権・肖像権)から学ぶ防犯。
②民法「あなたの不安を取り除く!-ワンクリック詐欺対策講座-」:
SNSの実演から『ワンクリック詐欺』について民法の観点で考える。
③刑法「黙って持っていくと窃盗罪?-窃盗罪と遺失物横領罪の違い-」
電車の忘れ物。届けるべきか…意外と知らない身近な犯罪を考える。
④刑事法「少年法の真実」:
大人と子どもの法律上の処遇と処分の違い。
⑤憲法Ⅱ「身近な「法」を知ろう!−ルール・きまりのあり方を考える−」:
ルール・きまりは何のためにあるのか。法やルールの読み方・解釈。
本事業で法教育を実施したことで、北海道大空町・同町教育委員会とが恒
常的に協働していく動機づけとなった。法教育では、学部生の実施はいまだ
事例が少なく、学生自身が法学への知識・関心を育む契機となる。学生が
「法をどのように教えるのか、どの段階で何を教えるのか」など検討を重ね、
専門学習や研究へと結びつけることができた。

4.その他
法教育では、学部生主体でかつ自治体と協働して教育機関で展開されている例はいまだ少ない。他方、法学修では学生が身につけた法学
の知識や考え方を専門学修に活かすことが求められる。
学生が主体となって法教育を展開する意義には、学生自身が能動的に資料研究や仲間との議論などが不可欠であり、学士過程において専
門学修や研究に結びつけるための教育的意義が大きいと言える。
今後、教育効果をどのように測定するかということを検討し、本事業に適ったレポートの課題設定などで学生の教育効果を継続的に観ていく
必要がある。2018年度、北海道大空町より助成を受けて、同じく学生が同町で町民に向けても法教育セミナーを実施する。実地で「地域貢
献」や「地方創生の実践研究(農業分野における法的検討)」なども視野に、法的な学修の質を高めた協働を行いたい。

5.ポスターリンク
H29第5種ポスター(西谷尚徳)