【H30年度第3種】和様文化形成の新基準―文学作品に見る音楽記述表現の変化― 

担当:

文学部 助教 山田貴文

内容:

当該年度は、和様文化形成の新基準を定めるべく、文学作品に見る音楽記述表現の変化を追うことで、物語文学を中心とした作品から和様文化として、周辺諸国から採り入れた歌謡が日本の独自の文化として確立するにいたる歌謡記述表現の過程を調査した。
具体的な内容としては、前年度まで研究の軸に据えていた催馬楽と風俗歌に続き、神楽歌を中心に据えることで、文学作品における歌謡引用記述の表現の歴史的な流れと、その中での変化を追う。古代歌謡として以上三つの軸を据えることは、文学作品における歌謡引用記述を確認する上で重要であり、その軸より作品の表現から関係性を追うことで、文学作品が構築した和様という文化の変化と変化による作品の評価の再確認をおこなう。
成果としては、神楽歌が、どの段階で歌から歌詞、そしてそれを扱うという行為に聖性を見出しているのか、神という日本固有の存在に対する認識を表現としてどう記述するのかという時代的変化を追うことが出来、さらに童謡という歌謡に目を向け、古代中国の歌謡解釈から、日本に受容するにおいてどの様な解釈がそこに与えられ、存在していたのかを雑誌投稿と研究会などでの発表を通して公開をする。
本研究の学術的重要性及び意義は、従来の諸本比較研究を踏まえつつ、表現研究として、新たなアプローチとして、文学と音楽という二つの素材に対して平行思考を用いたアプローチから、さらに古代日本と周辺状況の最新の研究状況を踏まえた内容として、時代ごとの断片的な研究成果から、横断した視点により従来の限定的な研究成果との差別化を明確にし、総合的な視点としての基準を定めることに意義がある。そのため、当該年度の研究は、新基準を定めるにあたり着実な成果を積み重ねることが出来たと考える。