【R1第3種】思春期の主体的価値形成とQOL向上を目指す学級単位の摂食障害予防プログラム

担当:武部匡也 心理学部 臨床心理学科 助教

内容:
当該年度に実施した本研究の成果として,思春期年代の女子に対して痩せに関する意識調査を実施したことが挙げられる。この調査は,思春期に対する摂食障害予防プログラムが有効であったかどうかを検証する際に用いる心理尺度の作成に向けた予備調査に位置づけられる。調査で得られた思春期の女子からの回答を基にして心理尺度を作成することによって,尺度の項目が思春期の女子に理解できる形で作成されていることを担保できる点で,今回の予備調査には意義がある。
 思春期年代の女子100名に対して,痩せに対する2つの質問に回答してもらった。調査はインターネットを通じて実施され,作業は調査会社に委託した。「もし痩せられたら,・・・」と「痩せていないと,・・・」の2種類の文章を完成させるように,自由記述形式で回答を求めた。結果として,「もし痩せていたら,自分に自信がもてる,性格が明るくなる,彼氏ができる,周囲の目が気にならない」という回答や,「痩せていないと,恥ずかしい思いをする,いじめを受ける,嫌なことを言われる,バカにされる」という回答が得られた。
 これらの結果から,思春期年代の女子が痩せを追求する背景には,「痩せられたら,良いことが起きる」というポジティブな予期が,一方で「痩せていないと,悪いことが起きる」というネガティブな予期が働いている可能性が暫定的に示唆された。これらの回答を基にして,痩せに対するポジティブ・ネガティブ予期の強さを測定できる尺度の作成につなげて,これからの研究ではそのポジティブ・ネガティブ予期が過激なダイエットや摂食障害の発症につながることを明らかにしていく。摂食障害予防プログラムでは,これらの要因を介入の標的として低減・緩和させることで,思春期女子が痩せを過度に追求しないようにすることを目指していく。